企業への投資を決定する際に、株主還元方針は重要な判断基準の一つとなります。
日本企業と米国企業の株主還元の水準には、大きな隔たりがあります。
株主還元を求めるならば、米国企業への投資は避けられません。
<目次>
日本企業と米国企業の株主還元水準の比較
生命保険協会がとりまとめたアンケートの結果に、日本企業と米国企業の株主還元の状況について書かれていたので、ご紹介します。
アンケートは、2017年10月4日から11月6日の間に実施され、上場企業581社、機関投資家116社の回答結果がまとめられています。
出典:平成29年度 生命保険協会調査 「株式価値向上に向けた取り組みについて」
1.日本企業と米国企業の総還元性向の推移
日本企業と米国企業を比較すると、直近では2倍以上の開きがありますね。
米国企業は株主重視の経営を行う文化であり、利益をほとんど還元しています。むしろ100%を超えていますね。。。
総還元性向とは
配当性向が当期純利益に占める配当金の割合を示すのに対して、配当金と自社株買いの金額を合算し、これを当期純利益で割って求めます。
2.日本企業と米国企業の配当性向の推移
意外なことに、配当性向だけで見ると日米企業でそこまで大きな隔たりはありませんでした。
配当性向とは
配当性向は、税引き後の利益からどのくらい配当を支払ったかを表すものです。
以下の計算式で求められます。
配当性向(%)=1株当たりの配当額÷1株当たりの当期純利益×100
一株あたりの配当額や配当利回りと合わせて配当性向もチェックすると、会社の株主還元方針のスタンスが見えてきます。
「配当性向が低いからダメな会社だ!投資価値はない!」とすぐに決めつけることはできません。
成長途上にある企業の場合は、将来の投資などに使うため、稼いだ利益を一旦内部留保しているだけかもしれません。
アマゾン(AMZN)やフェイスブック(FB)などは無配ですが、利益を投資に回すことで驚異的に成長しています。
しかし、明確な投資計画や成長戦略がなく、配当性向が低い会社は投資家からはマイナスに捉えらます。
そのような会社にはアクティビストなどから増配等の株主提案を受ける可能性も出てきます。
3.日本企業の配当性向の分布
上記2のとおり、平均すれば例年30%程度で推移していますが、以下の分布を見ると20~30%が最も多く605社(31%)にのぼります(母数:1,945社)。
0~10%の138社と10~20%の345社に、さきほどの20~30%の605社を足すと1,080社となり、全体の56%にのぼります。
低い配当性向に集中しているということですね。
4.機関投資家が望ましいと考える配当性向
これも意外だったのですが、配当性向は30~40%が望ましいという機関投資家が37.9%だったのに対して、水準にこだわらないと回答した機関投資家が25.9%もいました。
機関投資家の中には、投資先の企業が自分たちの置かれている状況を考慮して、適切だと考える株主還元方針を取れば良いと考えている人たちもいるからだと言えます。
ただし、何でも通るわけではなく、投資家に対する企業からのしっかりとした説明が求められます。
5.日本と米国における自己株式取得額の推移
最近は日本企業による自己株式取得のニュースもみられますが、まだまだ日米企業間では大きな差があります。
このように、日本と米国の企業には株主還元の水準に隔たりがあります。
株主還元に対する基本的なスタンスが違うので、おそらくこの先も差は埋まることはないでしょう。
配当再投資戦略を求めるのであれば、日本企業ではなく米国企業に投資する方が良いということが分かりますね。
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