よく、ニュースで「〇〇ファンドが大量保有報告書を提出し、▲▲株式会社の株式を5%以上取得したことを明らかにした」などと報道されると、それにともなって株を買う動きが強まり、大賑わいになるといったことが起こります。
大量保有報告書を提出したのが高パフォーマンスを誇っているファンドの場合、その投資判断に便乗しようとした参加者が殺到するわけです。
レオス・キャピタルワークス株式会社が、2018年4月5日に提出した大量保有報告書には、株式会社SOU(9270)の株式を7.48%取得したと記載されており、株価は大きく上げました。
このように大量保有報告書は投資の材料になりますが、では、それはどのようなもので、どうやって入手すれば良いのでしょうか。
<目次>
大量保有報告書制度とは
市場の透明性や公正性を保ち、投資家保護を行うという目的から1990年12月に導入された制度です。
誰かがある会社の株式を大量に保有した場合、経営に対する影響力が大きくなり、それにともなって株価が乱高下する恐れが出てきます。
これにともない、十分な情報を持たない一般投資家が不測の損失を被る可能性があるということで、その保護を行う必要性から導入された制度です。
ルールの概要
ルールは「株券等の大量保有の状況に関する開示(金商法第2章の3)」で規定され、大きく3つに分かれます。
①大量保有報告書の提出(金商法第27条1項)
- 上場会社の株式の保有割合が5%を超える場合は、取得日から5営業日以内に提出
- 記載内容は、保有割合、取得資金の内訳、保有目的、共同保有者など
②変更報告書の提出(金商法第27条の25)
- 大量保有報告書の提出後、保有割合が1%以上変動した場合や共同保有者の変更など大量保有報告書に記載すべき重要な事項に変更があった場合に、変動・変更があった日から5営業日以内に提出
③特例対象株券等の大量保有者による報告の特例(金商法第27条の26)
- 頻繁に株式を売買する証券会社、信託銀行、投資運用業を行う者は、一定の要件(保有割合が5%超10%以下など)を満たせば、特例報告制度の適用が受けられる
- 特例報告制度とは、提出の事務負担が軽減できる制度で、特定の基準日時点で(概ね2週間に1回)、5%や1%の基準に引っかかった場合に提出すれば良いといった制度。
※特定の基準日は、次の2つから選択し事前に財務局長に届け出を行う必要あり。
①各月の第2、第4月曜日(第5月曜日がある月は、第5月曜日も基準日となる)
②各月の15日と末日(土日に当たってしまったら直前の金曜日)
入手方法
大量保有報告書と変更報告書は、主に以下のサイトで、誰でも無料で検索・閲覧することが可能です。
1.EDINET(Electronic Disclosure for Investor's NETwork:エディネット)を使う
EDINETは、金融庁が運営する電子開示システムです。
金融商品取引法に基づいて提出された資料の閲覧が可能で、大量保有報告書や変更報告書のほかに、有価証券報告書や四半期報告書なども検索することができます。
【検索画面イメージ】
グローバルナビにある「書類検索」をクリックし、書類簡易検索画面に切り換えてから、検索することが可能です。
EDINETでは、あいまい検索が可能です。試しにレオス・キャピタルワークスで検索してみたら、1文字でも引っかけられました。すごいですね。
○レオス・キャピタルワークス
○レオス・キャピタル
○レオス
○レオ
○レ
※「レ」のみでも検索できましたが、この場合はレオス・キャピタルワークスも含めて、「レ」が含まれるすべての会社が検索結果に表示されてしまいます。
2.M&A onlineの大量保有報告書データベースを使う
株式会社ストライク(6196)が運営するサイトであるM&A onlineの「大量保有報告書データベース」を使っても検索することが可能です。
【検索画面イメージ】
検索画面の枠内に記入して検索ボタンをクリックするだけです。
【注意点】
保有者名については、報告書に記載どおりの会社名でデータベース登録されているとのことで、俗称や略称等での検索はできません。
この判定が非常に微妙で、レオス・キャピタルワークスで検索してみたら、以下のとおりの結果となりました。
○レオス・キャピタルワークス
×レオス・キャピタルワークス株式会社
×レオスキャピタルワークス
「中黒(・)」の有無も判定されるため正式名称を知っていないと検索は困難かもしれません。
また、株式会社と入っていてもダメでした(EDINETでは可能なのに、こちらではなぜ出来ないのでしょう。。)。
検索性ではEDINETに軍配が上がりますね。むしろEDINETは素晴らしいです。
◆こちらから閲覧できます。
配信サービスを利用するのもおすすめ
こちらもM&A Onlineが運用しているのですが、「まぐまぐ!」経由でメールアドレスを登録しておくだけで、1日ごとに大量保有報告書と変更報告書がメールマガジンとして届きます。メールにPDFのリンクが貼り付けられていて、サクッと閲覧できます。
いちいちEDINETやM&A Onlineのサイトに見に行く必要がないので便利ですね。
ただ、配信タイミングは報告書が提出された瞬間ではなく、1日分がまとめて配信されます。
【実際のメール抜粋】
◆こちらから登録できます。
大量保有報告書のどこを読めばいいか?
ポイントとしては、大きく3つあります。
①報告義務発生日=基準日
表紙に記載がありますが、ファンド等がいつの時点で株式を取得(または売却)したのかを把握します。
留意点としては、報告書の記載内容は、基準日時点の情報としては正確な情報ですが、反対に、基準日以外の情報は分からないということです。有名ファンドが大量に買ったから便乗して買ってみたら、既に売却していたということもあり得ます。
中には、基準日前に一旦売却して、基準日が過ぎてから買い戻し、意図的に報告書の提出を免れているファンド等もいます。
②報告書の提出理由
大量保有報告書が提出された場合は、保有割合が5%以上の買付があったことが分かります。
変更報告書が提出された場合は、表紙の「変更報告書提出事由」の欄に提出理由が、1~2行で書かれているので、買付があったのか、売却されたのかを確認します。その際、以下③のとおり保有割合の推移も合わせて確認します。
投資スタンスとして、保有割合が増えていたら買い、減っていたら売り目線でいきます。
その他、共同保有者の変更や、商号変更等があった場合も、変更報告書の提出事由となりますが、その場合は特に注意する必要はないと考えます。
③株券等保有割合
基準日時点の保有株式数と保有割合、合わせて直前の報告書に記載された保有割合が記載されています。概ね、最終ページあたりにあります。
ここで買付(または売却)のボリュームが分かります。
いかがでしたでしょうか。
ロングオンリーのファンドが大量保有報告書を提出していると安心感が出てきます。
私の保有株の一つである太陽ホールディングス株式会社(4626)も、「働く株主」というキャッチフレーズで有名なみさき投資株式会社が5.17%保有しており、今後の展開も楽しみです。
ちなみに、みさき投資は5,200円前後で買い付けている模様です。
みさき投資の目標株価は不明ですが、太陽ホールディングスの2018年4月11日の終値は4,635円なので、将来的に、少なくとも差し引き500~600円くらいは上がってくれるといいなと思っています。