6月中旬にもなると3月決算会社の株主総会担当者はソワソワした日々を過ごすことになります。
機関投資家や個人株主から議決権が行使され始め、議案の賛成票と反対票が毎日積み上がっていき、「このままいけば大丈夫だ!」とか「未だ大株主の〇〇会社が行使していない!電話で確認だ!」とか慌ただしくなります。
特に業績が悪いと、取締役選任議案で社長に反対する投資家が多くなるので、社長はもちろん側近達もピリピリしてきます。
万が一でも否決となったら新聞沙汰にもなりますし大問題ですからね。
ところで、議案の賛否ってどのような基準で決まるかご存知でしょうか。
会社法で決まっているのですが、議案の内容により3つに分類されます。
<目次>
どのくらいの賛成票が集まれば可決するのか?
先ずは定足数
決議の種類の前に先ずは定足数です。
定足数とは、株主総会を開くために最低限必要な議決権個数のことで、それを満たさないと決議できません。
要は「会議の出席者が少なければ議案の内容は検討しないよ」ということです。
ただ、定足数が足りないことで決議できなくなる会社はほとんど見られないので、問題になるのは次で説明する決議要件です。
決議の種類は3つ
決議の種類には、①普通決議、②特別決議、③特殊決議の3つがあります(③特殊決議は文字どおり特殊なので無視してOK)。
以下では少し細かく説明していますが、個人投資家としてはざっくりと「普通決議は議決権の半分、特別決議は議決権の3分の2を取れば可決する」ということだけ押さえておくだけでもいいと思います。
①普通決議
役員選任議案や剰余金の処分議案など、一般的な議案を決議する時の方法です。
<定足数> 議決権を行使できる株主が持つ議決権の過半数が必要
<決議要件> 出席した株主の議決権の過半数の賛成で可決
※定足数は、定款で定めていればゼロにすることが可能です。ただし、役員選任議案については、3分の1までしか緩和できません。
②特別決議
普通決議よりも決議要件が厳しくなります。
それだけ審議する事項が重要な内容となります。具体的には、定款変更や株式の併合、資本金の減少などです。
<定足数> 議決権を行使することができる株主が持つ議決権の過半数が必要
<決議要件> 出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で可決
※特別決議事項についても、定款で定めていれば、定足数を議決権の過半数ではなく、3分の1まで緩和することが可能です。こちらもほとんどの会社が対応しています。
③特殊決議
文字どおりほとんど見られないレアケースの案件を審議する際の決議となります。2種類あります。一応紹介だけ。
①議決権を行使できる株主の半数以上で(議決権個数ではなく人数です)、かつ、その株主が持つ議決権の3分の2以上の賛成で可決
⇒発行株式数の全部に譲渡制限を付ける定款変更などが決議事項にあたります。
②非公開会社のパターンですが、総株主の半数以上かつ総株主の議決権の4分の3以上の賛成で可決
⇒要件を見ると可決が非常に難しそうですね。これが適用されるのは、非公開会社において配当や議決権などを株主ごとに異なる取り扱いを行う旨の定款変更議案です。
株主総会の開催前にほぼ可決することが決まっている
基本的に、株主総会前日までの議決権の事前集計で、ほとんど可決することが決まっています。
会社は大株主やOB、持ち合いを行う得意先に対して、事前に電話等で議決権の事前行使をお願いして票固めをしてしまうからです。
(あくまで行使をお願いするもので、賛成票を入れてくれと頼むものではありません。ただ関係を築けていたら基本的には賛成票を入れるはずです。)
総会前日までに賛否が拮抗している時は当日採決を取るということもあり得ますが、ほとんどありません。
そのため、総会に出席したとしても自分の賛否の意思が決議結果に反映されることはないというのが実際のところです。
ただ、総会はトップの考え方などを直接聴ける年に一度のチャンスなので是非出席して、議案に賛同するならば拍手をもって意思表示したいところです。
なお、議決権行使結果は、総会終了後にEDINETで臨時報告書の形で公表されます。
賛否が気になった会社については確認してみてはいかがでしょうか。
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